2019年11月の記事一覧
ウインナーで考える
「お店に売られているウインナーは、40種類あります」そんな先生の声に、教室がざわつきました。シャウエッセン、アルトバイエルン、あらびきポーク、パリッと朝食ウインナー、豊潤、香薫……と、子どもたちもそうでしょうが、私も、ウインナーにこれほど多くの仲間がいることをはじめて知りました。
先日、子どもたちは、家庭科の調理実習の食材選びに、マックスバリューの見学に行きました。野菜炒めを作るらしいのですが、そこで使うウインナーとしてどれがよいのか、改めて先生から本時の課題が突きつけられたのです。スーパーで何気なく手にとったウインナーに、なぜそれを選んだの?と言われても、私は困ります。しかし、そこは子どもたち。熟考し、根拠を導きます。私たちが日頃素通りしてしまうスーパーの陳列棚の一角が、こんなふうにおもしろい授業へと広がっていったのです。
さて、本時のメインディッシュともいうべき、3種類のウインナーが丁重にお盆にのって登場しました。それを見て子どもたちは「食べたい」「試食」とつぶやきますが、先生はにやりと微笑んで「ダメです」と一喝。40種類から選ばれた選手は、A……お弁当のタコになって登場する、赤くてきれいで格段に安い品。C……私は食べたことのない一本35円もする、いかにも高級品。B……AとCの中間。私の家庭でも食べている庶民の品か。
子どもたちは、話し合います。値段、大きさ、数量、使い道、産地、さまざまな観点から考えます。そして、ほとんどの子がBを選んだのです。選んだ根拠として興味深かったのは、「家でよく使う」「見慣れている」「親が美味しいと言った」等、家庭の香りがしたことです。やはり家庭こそが安心の拠り所なのでしょう。
ただ、ここで引き下がるわけにはいきません。色合いが大切と意見が出たところで、先生は「安くて、赤くてきれいで。なぜAがダメなの」と追い込みます。子どもたちも負けてはいません。「安いからいいというものではない」と毅然と答えます。そして、「いいというもの」とは、何だろうか。見た目だけではなく、食品添加物に目が向いていくのでした。
正解を出すことだけが学習ではありません。このように考えることが、新しい時代に見合った思考力を磨くということではないでしょうか。今度、我が子とスーパーに行ったとき、ぜひウインナーを選ばさせてあげてください。福岡っ子発表会に寄せて
晩秋の冷え込みとともに、学校の周りの街路樹も少しずつ色づいてきました。イチョウ、イロハモミジ、ケヤキ、ソメイヨシノなど、それぞれの樹がそれぞれの色に染まろうとしています。それにしても、昨今の異常気象の中にあっても、多少の早い遅いはあるにしろ、こうして約束を果たすように学校を染めてくれる風景にふれると、樹木たちに「今年もありがとう」と伝えたくなります。
一方、本校も福岡っ子発表会が近づいてきました。届いたプログラムを見ますと、今年も美しいメロディや力強い音の響きの演奏を皮切りに、楽しみな企画が並んでいます。勇気や信頼をテーマに、アイディアあふれる演出と力強い演技が際立つ冒険の物語もあれば、戦争や校区の歴史を取り上げ、人の営みや思いそしていのちを見つめるもの、さらには、野菜や虹の子など他の物になりきって、元気で明るい自分たちを表現するものと、楽しみは尽きません。
紅葉の見ごろは十一月の終わりでしょうか、一年中のわずかな期間です。しかし、樹々たちは、たったひとときその瞬間に向かって、精一杯生きているように見えてきます。福岡っ子たちも、発表会というほんのわずかな時間のために、先生たちの叱咤激励を受けながら積み上げた練習を糧に、自らを新たな自分に染め上げて、本番に臨むことでしょう。
詩人のサトウハチロウ氏の詩「自分を染めてあげてください」の詩の一節に、「ひとにやさしく、自分にはきびしく、これをつづけるとすばらしい色になる。ひとをいたわり、自分をきたえる これが重なると輝きの色になる」とあります。あと一週間の練習で、子どもたちがどのように色づいてくれるか楽しみでなりません。ワンチーム
修学旅行に行ってきました。6年生のテーマは、「I」(あい)見つけ。学び合い、助け合いを子ども同士が見つけようというものでした。私も、6年生の「I」見つけをしようと参加しました。
私が彼らの中に見つけた「I」は、時間を守る、しゃべらず動くという 集団行動の素早さです。
まず旅の始まりの豊橋駅。この時期は、修学旅行シーズン、駅は多くの児童や生徒が終結する場です。この日もお隣の栄小学校そして、南高校の生徒たちが集まっていました。いち早く集合完了した福岡っ子は、速やかにホームに移動、だまって行動する姿に、思わず感心した駅員さんから「高校生よりすごい」と、お褒めの言葉をいただきました。
京都駅でも、予想通り、修学旅行生に加え、一般の観光客、外国人旅行客とごったがえしていました。ホームに降りると、添乗員さんを追いかけて階段を下ります。先頭が見えにくいなか、福岡っ子は、群衆をかき分け一団となってバスに乗り込むことができました。
観光地につけば、写真撮影のベストスポットは、当然混雑しています。法隆寺の境内でも、東大寺の鏡池前でも、そうでしたが、時間と空間のすき間をぬって、素早く整列し撮影し、速やかに、次の団体に明け渡す動きがありました。クラスが「移動して」「並んで」「ポーズして」と一連の動きの速さは、写真屋さんを驚かすほどでした。
学校に戻れば、写真屋さんの撮影した集合写真が展示されます。青空をバックにさわやかに並ぶ笑顔の裏には、短時間で混雑を克服したという自信があふれているのです。
さて話は変わりますが、先日ラグビーのワールドカップは最高の盛り上がりを見せて閉幕しました。日本は強豪に次々と勝利し初のベスト8を果たすなど、「ワンチーム」としての結束ぶりが評価されました。ですが、福岡小6年生の動きもなかなかです。日本代表に負けず劣らずの立派なワンチームだったと思っています。