日誌

全校

大きくなったなあ


 令和2年がスタートしました。2棟の前に植えられた菜の花も、ところどころ花が開き始め、寒々とした空気が緩んできています。春は近づいてきているようです。

 さて、1月7日、冬休み明け集会が開かれました。

私は全校児童に話をした後、フロアの後ろに座っている高学年のところに行ってみました。さすが5,6年生、係の先生の話に真剣に耳を傾けています。そして最後に校歌を歌う場面になりました。号令のもと、立ち上がった彼らの後姿を見て、驚きました。12月末からまだ半月ほどしか経っていないのに、子どもたちがずいぶん大きく見えたのです。成長期は、子どもによっては、半年に5、6㎝も伸び、急激に成長する子もいます。しかし、新しい年を迎え、やがて中学生として、あるいは最高学年として歩まなければならない自覚が、彼らを大きく見せたのかもしれません。

 人の成長には、大きく飛躍する時ときっかけというものがあるものです。それは、準備されて訪れるものとは限りません。ある時偶然であったり突然であったりするものです。

卒業や新学年まであと3か月を切りました。さっそく体育館では、PR委員会のPR大会が開かれていました。自分の趣味や特技を披露するものですが、大衆の面前でそれを行うとなると、なかなか勇気がいるものです。何かを挑戦したり、継続したりする中で、この子の伸びるときを待ちたいと思っています。

 また校長室では、2年生九九検定が続いています。家庭や教室ではできるのに、ここに来ると緊張して覚えたものが飛んでしまう子もいます。できる、できないではなく、緊張感を乗り越えた向こう側に成長があると信じ、子どもたちと日々向き合っているところです。 

パプリカ合唱隊


  保護者の皆さんから、「挨拶が進んでできない」というアンケート結果をいただきました。そうした声を受けてか、3年生、5年生では、総合の授業や学級会で、挨拶について話し合い時間をもってくれました。教室ではやる気満々の子どもたちです。さあ、学校の外では……

 その週の寒い朝のことです。太田スポーツから上ってくる坂道より、何やら声が聞こえてきます。耳を澄まして聞いてみると、どこかで聞き覚えのある歌です。それも一人の声ではなく、何人かの歌声です。その朝は、冷え込みが厳しく、立っているだけで寒さがぞくぞくと身に染みてきます。私は凍えながら、彼らがこちらに来るのを待つことにしました。坂道を上ってくる彼らは、明るく笑顔でこちらに近づいてきます。寒さなど微塵も感じていないようです。

坂道を上りきると、その歌声はさらに大きく聞こえました。さあ、いよいよ曲のサビの部分に入ろうとしたとき、私の姿を認めた子どもたちは、急に歌うのをやめ、大きな声で叫びました。

「おはようございます」

「ああ、おはようございます」と私は挨拶を返し、「何という曲?」と聞くと、子どもたちは一斉に笑顔で「パプリカ」と答えてくれました。

その後、子どもたちは、角を曲がり、西門に向かいました。そして、しばらくすると、再びパプリカが始まりました。私は、後ろ姿を眺めながら、彼らを「パプリカ合唱隊」と勝手に名づけました。寒い朝でしたが、合唱隊の元気な歌声と挨拶に、何とも気持ちのよい朝となりました。 

  冬場の登校は、冷たく気が重いもの、おそらくパプリカ合唱隊の中にも、そういう子はいたに違いありません。しかし、歌声と仲間の力で、元気な朝を迎えることができたのです。見ると合唱隊は、今はもう学校に到着するところでした。 

マラソンの宝物


 今年度本校に赴任した川島先生は、マラソンが趣味だそうです。日本各地のマラソン大会に参加している、42.195㎞を走るまさしくレジェンドです。「あんなにつらい競技、なぜ走り続けるの?」と私が聞くと、「走るのが楽しいから」と答えがあっさりと返ってきました。どんなことに対してもやはり「好きである」ことが向上の第一歩であると、改めてわかります。

  さて、今年の校内持久走大会は、風もない小春日和の11日に実施できました。昨年は、インフルエンザ流行により学級閉鎖もありで、年越しをして実施した学年もあったことを思えば、今年は最高のコンディションであったと言えます。

 とはいえ、川島先生のように「楽しく走る」境地には、子どもたちはまだほど遠いらしく、顔をしかめ苦痛にあえぐ顔や、涙を浮かべて悲嘆にくれる顔と、私の前を走りゆく顔は、どう見ても楽しそうではありません。楽しい境地は、もう少し時間がかかりそうです。

 今年のマラソンも、順位や記録といった結果だけでなく、悲喜こもごものドラマがありました。

   休日も学校に来て練習を続けた子、友達についていこうと懸命に友の背中を追った子、ライバルに敗れ、悔し涙を流した子、疲れて倒れたが先生の言葉に復活し再び走り始めた子、去年は伴奏者がいたが今年は自力で走った子、そして、友達のために声を枯らして応援した子など、そこには、順位、記録という器からはこぼれ落ちても、さんさんと輝いているものがあります。その放っておけばうずもれてしまう宝物を拾って、本人に「がんばったね」と言葉で返してあげるのが大人の仕事です。

 保護者の皆さん、ご来校ありがとうございました。わたしたち教職員が、拾いきれなかった我が子の輝きを、ぜひご家庭で届けてあげてください。

舞い散るイチョウの葉を見つめて

 

   陽光に照らされながら、黄金色に染まったイチョウの葉が、はらはらと舞っています。その中を子どもたちは走りぬけていきます。

かけ足訓練が始まりました。イチョウの樹は、眼下にこうした子どもたちの頑張る姿を眺めて毎年葉を落としているのでしょうか。樹の根元では、今日も用務員さんが朝から竹ぼうきや熊手で落ち葉をかき集め、軽トラックにのせています。ご苦労様です。

   落ち葉舞う光景を見ていたら、先日行われた特別支援学級の「クリスマスの集い」を思い出しました。総合体育館で行われたこの会のクライマックスは、体育館の天井から舞い落ちる紙吹雪です。その紙吹雪の風景が、落ち葉舞い散る本校のそれと重なったのです。会場が暗くなり、雪のような紙吹雪がひらひらと落ちてきます。市内の特別支援学級の子どもたちは、両手を広げながら歓声をあげています。そして、会場が明るくなると、フロア一帯は 紙吹雪の雪景色が広がっています。

   アナウンスとともに雪合戦が始まりました。よく見ると、一片一片の紙きれは、形がさまざまです。四角もあれば三角もあり、いびつな形もあります。その形の一片一片に、子どもたちが雑紙を細かく切り準備した姿が浮かび上がります。これだけ膨大な量ですので、たくさんの時間を要したに違いありません。放課も使いながら、子どもと先生が車座になって会話を楽しみながら切り続ける光景が見えるようです。紙吹雪が美しく見えるのは、楽しかった先生とのふれあいの思い出もあるからではないでしょうか。

 会場にはたくさんサンタクロースが集まりました。が、先日は、本校にもたくさんの方が訪れ、すてきなプレゼントをいただきました。「むかしあそびの会」です。校区のご老人が、めんこ、コマ、お手玉、けん玉、あやとりなどと、さまざまな遊びを教えてくれました。会場は、「クリスマスの集い」と同じように、1年生の歓声がいつまでも響いていました。

ウインナーで考える


 「お店に売られているウインナーは、40種類あります」そんな先生の声に、教室がざわつきました。シャウエッセン、アルトバイエルン、あらびきポーク、パリッと朝食ウインナー、豊潤、香薫…と、子どもたちもそうでしょうが、私も、ウインナーにこれほど多くの仲間がいることをはじめて知りました。

先日、子どもたちは、家庭科の調理実習の食材選びに、マックスバリューの見学に行きました。野菜炒めを作るらしいのですが、そこで使うウインナーとしてどれがよいのか、改めて先生から本時の課題が突きつけられたのです。スーパーで何気なく手にとったウインナーに、なぜそれを選んだの?と言われても、私は困ります。しかし、そこは子どもたち。熟考し、根拠を導きます。私たちが日頃素通りしてしまうスーパーの陳列棚の一角が、こんなふうにおもしろい授業へと広がっていったのです。

 さて、本時のメインディッシュともいうべき、3種類のウインナーが丁重にお盆にのって登場しました。それを見て子どもたちは「食べたい」「試食」とつぶやきますが、先生はにやりと微笑んで「ダメです」と一喝。40種類から選ばれた選手は、A…お弁当のタコになって登場する、赤くてきれいで格段に安い品。C…私は食べたことのない一本35円もする、いかにも高級品。B…AとCの中間。私の家庭でも食べている庶民の品か。

   子どもたちは、話し合います。値段、大きさ、数量、使い道、産地、さまざまな観点から考えます。そして、ほとんどの子がBを選んだのです。選んだ根拠として興味深かったのは、「家でよく使う」「見慣れている」「親が美味しいと言った」等、家庭の香りがしたことです。やはり家庭こそが安心の拠り所なのでしょう。

   ただ、ここで引き下がるわけにはいきません。色合いが大切と意見が出たところで、先生は「安くて、赤くてきれいで。なぜAがダメなの」と追い込みます。子どもたちも負けてはいません。「安いからいいというものではない」と毅然と答えます。そして、「いいというもの」とは、何だろうか。見た目だけではなく、食品添加物に目が向いていくのでした。

 正解を出すことだけが学習ではありません。このように考えることが、新しい時代に見合った思考力を磨くということではないでしょうか。今度、我が子とスーパーに行ったとき、ぜひウインナーを選ばさせてあげてください。