日誌

2019年1月の記事一覧

朝の優しい時間

 毎週火曜日の朝は、読み聞かせの時間です。教室では、子どもたちが車座になって、図書ボランティアの方を待っています。図書ボラのお母さんたちは、毎週家庭や市の図書館、本屋さんで選んだ、とっておきの話を持参してくださいます。

 お話が始まりますと、ざわついていた空気も、魔法をかけたようにしいんと静まります。先生たちも、子どもの輪に中に座り込んで、子どもの目線で子どもといっしょに、お話の世界に入っていきます。低学年の子の中には、先生の膝の中に入って、親子のように聴き入っている姿もあります。一日の中で、教室の空気が、学級から家族に変わるのはこのときです。

 読み聞かせをしてくださる方もさまざまです。登場人物と地の文で声色を変え、臨場感豊かに読むお母さん、あえてたんたんと朗読し、子どもの想像力をかきたてるお母さん、クイズや子どもへの語りかけをして、子どもの反応を楽しみながら、話をすすめるお母さん。先日は、男性の方もサポートに来ていただきました。さすがお父さん、抑揚と迫力のある語り口に、すっかり子どもたちはとりこになっていました。

なかには、入学前のお子さんを連れて、お話を聞かせてくれる方もいます。お話が始まると、そのちびっこもお母さんの方に向きを変えていっしょにお話を聞いています。はじめはこの子に「かわいい」とつぶやいた女の子たちも、その様子にあわてて、お母さんに視線を向けます。

 子どもたちが、落ち着いて安全に、一日のスタートを切れるのも、こうした優しい時間をくぐっているからだと思います。図書ボラだけではありません。さまざまな校区の方たちが、授業や行事や環境整備に関わってくださり、目に見えない心の栄養をいただいて、子どもは成長していくのでしょう。いつもありがとうございます。

 ところで、先日行った学校評価アンケートでは、図書館の利用の少ない傾向が表れていました。今、図書館では、節分、バレンタインと、春に向かって飾りつけがされています。本市でも有数の本校図書館の利用を、全職員で充実させたいと取り組んでいるさなかです。  

きっかけをつくる人に


 放課になると、校庭に星野源の「アイデア」というという曲が流れます。朝ドラの軽快な音楽とともに、一斉に子どもたちが運動場に飛び出していきます。23日の長縄大会に向けて、練習は佳境を迎えています。遠くから見ると、広いグランドという海が波打つように、あちこちで長縄の波が生まれています。

 本番まで一週間を切りました。それぞれの学年の掲示板には、福岡ギネス記録とともに、現在の記録が書き込まれています。117日現在の最高記録は、あすなろ298回、1年生が299回を、2年生251回、3年生303回、4年生414回、5年生674回、6年生568回と記されていました。記録は、随時書き直され、数字をふき消したプレートの汚れが、日々の記録更新を物語っています。とりわけ6年生は、最後の大会ということで、学年掲示にも「クラスでまとまる」「みんなで楽しむ」「友達のよさを見つける」「体力をつける」「声をかけあう」ように、大会に寄せる意気込みが並んでいました。

 実際にそれぞれの長縄に寄ってみますと、低学年の子の中には、まだまだ縄に飛び込むことに躊躇している子もいます。すると、どうでしょう。後ろの子が飛び込むタイミングを推し量って、そっと背中を押しているではありませんか。つんのめるほど強くなく、戸惑うような弱さでもなく、絶妙の強さに優しさがありました。また、中学年や高学年においても、「ハイ、ハイ、ハイ」と声でリズムをとって、クラス全体で飛び込むきっかけを作っていました。

 人が成長するときは、きっかけがあるものです。自転車に初めて乗れたときも、跳び箱を初めて跳べたときも、おそらくそうだったでしょう。世界で活躍する野球の大谷選手も、将棋界で活躍する藤井七段も、こんにちがあるのは、飛躍のきっかけとなった出会いがあったに違いありません。私たちは、成功した人に目を向け、称賛を送りがちですが、その陰にいる人や集団の存在を忘れてはならないと感じています  

特別な思いをもって


 年明け早々、和太鼓部の子どもたちは、成人式に向けて、練習をスタートさせています。新成人を迎えた先輩たちへのはなむけとして、和太鼓演奏は、本校では、恒例のイベントになっています。

真冬の冷たい空気の中、儀式の前座という緊張感あふれる場で、しかも冬休みがあり練習不足を否めない状況での演奏は、さぞ大変なことでしょう。子どもたちは、そうしたリスクをバチでふるい落とすかのように、テンポや間合いを確かめながら、熱の入った練習に励んでいました。

 新成人の皆さんは、今から8年前、平成23年に本校を卒業した子どもたちです。この年は、3月11日、東日本大震災が東北地方を襲い、多くの人々が尊い命を失いました。その中には、卒業式を前に津波にのみこまれ、今年成人式を迎えられない同学年の人たちもいたはずです。そう考えると、大人になるという、いかにも当たり前のことが、特別なことに思えてなりません。

 和太鼓部の6年生も、これまで当たり前に練習してきた毎日が、卒業と同時になくなるわけです。彼ら自身、最後の発表の場として、特別な思いをもって演奏に臨んでくれるに違いありません。また、和太鼓部でなくても、6年生の皆さんも同様です。小学校生活という当たり前だった毎日が、卒業というゴールが見えてきたとき、急にかけがえのない時間に思えてくるものです。ぜひ、1日1日大切に過ごしてほしいと思います。

 みなさんが成人式を迎えるころは、どんな時代が、どんな世の中が訪れているでしょうか。平成の最後の今、あなたの夢を新たな時代に向かって掲げてみてください。