日誌

2019年5月の記事一覧

トンボの羽化


   3年生の教室で、「飼っていたヤゴがトンボになったよ」そんな声が校長室に届きました。さっそく教室に行って水槽の中をのぞいてみると、まだ何匹かのヤゴが残っています。ヤゴは、よく見ると風貌はグロテスク、メダカやオタマジャクシを素早く捕食するハンターだそうです。

羽化は、授業中でした。止まり木でじっとしていたヤゴは、授業に集中する子どもたちの空気に決意したのか、その場で自らの殻をやぶり、一気にトンボになったと聞きました。種別は、赤とんぼでおなじみのアキアカネ。

 ヤゴは、トンボになるまで、10回前後脱皮を繰り返すそうです。初夏の風にのって、軽やかに飛んでいるかのように見えるトンボですが、それは、成虫になるまで脱皮や羽化、幾多の試練を乗り越えた雄姿であることを忘れてはなりません。

 さて、運動会が終わりました。厳しい暑さの中、全力を尽くす子どもたちの姿に感銘を覚えました。子どもたちは、ずいぶんたくましく成長しました。

なかでも、高学年のスタンツの時でした。始まりの音楽とともに演技が始まるわけですが、CDを入れても音が出てきません。子どもたちは、身をかがめたまま、じっとその時を待ちます。直射日光が照りつけ、汗が滴り落ちたでしょう。それでも、彼らは音楽がかかるのをそのままの姿勢で待ち続けたのです。ようやく音が聞こえてきました。逆境に耐え、満を持してそのときを待つ。彼らの姿に、まるでトンボの羽化を見ているようでした

 人間は、ヤゴのように脱皮や羽化はありません。子どもたちは、今日の演技に至るまで、何度も心の脱皮を繰り返し、運動会本番の晴れ舞台で、見事羽化したのではないでしょうか。令和の風に吹かれてゆうゆうと飛んでいるトンボ。それは、本校を支える子どもたちの未来のように思えてきました。