豊橋・学校いのちの日

「全校集会・校長講話」

今から10年前、6月18日は本校の野外活動の2日目でした。みなさんの先輩である「西野花菜さん」は、野外教育活動として行われた三ケ日青年の家でのカッターボート訓練中の事故で、尊い命を落としてしまいました。

今日は、何よりも、先生たちが、花菜さんのことやその事故のことを絶対に忘れない、安全については万全を期していくことを確認する日です。その一方で、みなさんも、自転車の乗り方や校内での安全について注意を受けることもありますね。つい最近も、安全委員の生徒から自転車での登下校について注意喚起がありました。また、昨年度中には、校内や登下校中で発生したけがで、念のためというのも含めて病院にかかってもらったものが50件近くありました。部活動中の事故で救急車を要請したこともありました。また、中には、長引いてしまったけがもあります。みなさんの身の安全を守るためには、先生達とともにみなさん自身の意識の高まりや協力も必要だということで、みなさんにもいのちの大切さを考えてもらう日となっています。この行事は、豊橋市内すべての小中学校で行っています。

 さて、毎年、校庭に掲揚している旗を紹介します。これは、花菜さんの好きな色、菜の花の黄色の旗で、花菜さんが野外活動のしおりの表紙に描いた絵です。そこには、自然から学ぶ、協力の大切さを学ぶという意味で、生徒たちとカッターボートが描かれています。「夢があるっていい」。という言葉は、花菜さんが野外活動1日目の夜の研修会で、しおりに綴ったものです。この言葉には「私はこの同級生の活躍をみたい。」という続きがあります。花菜さんは、仲間の活躍を期待する学年のリーダーでありました。さらにときどきご病気をされたお母さんを思ってか、「自分の夢は医者だ。」と記していました。志の高い花菜さんなら、きっと、立派な医者になったことでしょう。この事故は、そんな花菜さんの夢を一瞬で奪い去ってしまいました。

この、黄色い旗は、三つあり、三ケ日青年の家と運営会社であった小学館集英社にもあります。今日は、それぞれの場所でも追悼の行事が行われ、この旗が掲げられます。三ケ日青年の家では、今でも行事のたびにこの旗が掲げられています。また、今年は曲を流すだけになってしまいますが、毎年みなさんが歌っている「未来(あした)へ」は、当時の家庭科の先生が花菜さんを忘れないための何かを残したいという思いで作られたものです。この歌は、三ケ日青年の家での追悼行事の中で三ケ日中学の生徒も毎年歌っています。

このほかにも、「忘れない」ために目に触れることができるものが用意されています。一つは章武館の西側にあるハナミズキの木です。もう一つは図書室にある花菜文庫です。花菜文庫の本は西野さんのご両親から寄付していただいており、現在541冊目になります。お母さんが設計してくださった書棚も三つになりました。パネルも掲示してあります。このほかに、吹奏楽部が演奏する曲の楽譜を14曲分いただいています。

 今日は、いのちを考える道徳の授業、そして、西野花菜先輩を追悼するバルーンリリースを実施します。午後からは、花菜さんが「活躍を見たかった」同級生であり親友の平松明華さんから「パズルのピース」として講演をしていただきます。みなさんが下校した後は、何がなんでも先生がみなさんの命を守り抜くという研修として「自然体験活動の取り組みについて」という題で花菜さんのお父さんである友章さんからお話をうかがいます。

 今日は、花菜さんのことを静かに思い、かけがえのない命の大切さ、また、家族や友達、周りの人の命を大切にするためになすべきことを考える一日となることを期待して、わたしからの話とします。今日は、よろしくお願いします。