校長だより
サクラソウのことば
一棟の北側に黒いシートが取り付けられました。温室で育てたサクラソウを屋外に出し、その霜よけのためのシートだそうです。このサクラソウは、卒業式を彩るために、用務員さんたちが、秋に種を蒔き、水やりだけでなく、苗の生長に伴い植え替えをするなど、温室で精魂こめて育てたものです。なぜ、この冬場に外に出すのか。用務員さんに聞いてみますと、温室育ちは背丈ばかり伸び、風が吹くと倒れてしまう、寒さにさらすことで根をはらせ、丈夫にするのだそうです。私はなるほどと聞いていました。
温室のとなりにある菜の花畑もそうです。用務員さんは、11月に種を蒔きます。が、極力肥料はやらない。養分が少ない土壌で、菜の花は、それを求めて必死に根をはろうとする。そのため、背丈は低いが、丈夫な菜の花がひしめき合って、寒さを凌いでいるように見えます。
私は、人も同じだと思いました。温室ばかりで育つと、人生の逆風に耐えていけない、幹の弱い人になってしまいます。困難や試練は、人間形成にとって大きな栄養なのかしれません。そう考えると、サクラソウや菜の花の姿は、春の訪れだけでなく、生きる上で大切な教訓を教えてくれると思うのです。
そんなことを思っていると、チャイムが鳴りました。わんぱくタイムです。運動場では、縄跳びをする子、鬼ごっこをする子、ドッチビーをする子があふれています。寒風に負けず、走り回る、子どもたちの表情は、まるで満開のサクラソウや菜の花を見ているようでした。