日誌

小さな失敗のすすめ


   ひと昔前の話です。私は、仕事で失敗をしてしまいました。他の人からは「大きなミスではないよ」と慰められ、今から思えばたいしたミスではなかったと納得もできるわけですが、当時の私にしてみれば、同僚にかなり迷惑をかけたことですし、その重大さに動揺し、落ち込みも激しかったと思います。

 外に出て頭を冷やしました。そして、自分の席に戻ってみると、一枚の一筆箋が机上に置いてありました。

「大きな失敗をしないために、小さな失敗をしよう」。手書きの文字で書いてありました。先輩の文字でした。「小さな失敗をしよう」という前向きな言葉に、私のへこんだ心は、ずいぶん楽になった気がします。

「小さな失敗をしよう」これまで仕事を続けることができたのも、心のどこかで、この言葉が支えてくれたのかもしれません。

 さて、本校の子どもたちに目を向けますと、いよいよ運動会を間近に控え、その練習が真っ盛りです。教室や運動場のあちこちから、運動会の歌声や応援合戦のかけ声が聞こえてきます。今年のテーマは、「令和の風を巻き起こせ、赤白青の白熱バトル」。競技や演技のバトルの中で、当然「負けた」「できなかった」「恥ずかしかった」と、失敗や挫折もついて回るわけです。現に、運動会で涙したり自信をなくしたりする子を、これまで何度か見てきました。しかし、これらは、長い人生を思えば、小さな失敗です。小さな失敗は、挑戦する勇気と、大きな失敗を回避する見通しを学ぶ貴重な経験だと思うのです。

 今日も、外遊びで、「転んだ」「打った」「ぶつかった」と、何人かの子たちが保健室に足を運んでいます。すこし痛そうですが、けっして暗くない表情を見て安心します。痛みを通して、安全や危険も学ぶ。「将来、大きなけがをしないための、小さなけがなんだよ」。そんな思いで、子どもたちを見守ることにしています。