日誌

各駅停車

 

 「ぶらり途中下車の旅」という番組ではありませんが、校長室から各教室へ、途中下車するように歩くことが日課になっています。

ある教室は、「算数の友」を各自取り組んでいました。課題が黒板に記され、できあがるとそれを先生に見せにいきます。「できたあ」の声とともに、先を争うように、先生のところに駆けこむ子たちがいます。できた喜びをいち早く先生に伝えたい、それが子ども心でしょう。が、私が注目した子は違いました。静かに席を立つと、床に落ちている鉛筆をおもむろに拾い持ち主に届け、解き方に困っている子には、小声でアドバイスするなど、なんともゆったりした歩調です。結局、彼は、最後尾に平然と並びました。「ゆっくり」も悪くないなあと思い、教室を出ました。

また、ある教室では、話し合いの授業が行われていました。活発な意見交流です。発言内容に耳を澄ますと、「○○君につけたしで……」「○○さんと少し違って……」と、仲間に敬意を表すように、発言の枕詞に友達の名前をつけていました。黒板にはたくさんの子の名前のプレートが並びました。先生が考えた授業の道すじに、おのおのの子が考えを上書きしていく授業。「どっちがいいんだ?」の先生の質問に、結論を急ぐのではなく、ああでもない、こうでもないと各駅停車しながら、進んでいました。そして、最後は「どちらも悪くない。大事なことは、歩みたい人生を自分で判断することです」と大人顔負けの人生観ともいうべき意見に、授業の終末がきゅっと締まりました。

 図書館に行くと、1年生とあすなろ学級の子が本を選んで読んでいました。1年生は、お気に入りの本を私に見せてくれました。あすなろのひとりは、テーブルで電車図鑑を熱心にみています。「電車がすきなの?」と聞くと「うん、好き」と答え、東海道線のページをみせてくれました。そこには、各駅停車の電車が並んでいました。各駅停車もなかなかいいものです。