日誌

雨男

  どうも彼は「雨男」らしい。彼とは、本校の運動会主任のS先生。

 思えば、運動会全体練習がはじまったゴールデンウィーク明けから、いきなり雨、雨……。雨音を聞きながらの体育館全体練習に、「S先生は雨男じゃないか」とにわかに噂が広がりました。しかし、彼はそんな声に動じません。夜遅くまで、翌日の準備を欠かせませんでした。その熱い思いが、天の神様にも通じたのか、その後は天候も回復、夏の陽ざしの中、練習が続きました。

 運動会本番を週末に控えた週間天気予報では、当日は快晴、30度近くなると報じられ、雨どころか、熱中症対策のために、前日に「暑さ対策」のチラシを配布しました。

 運動会当日になりました。この日も、彼は早朝から、グラウンドやテント、器具の準備具合はよいかと、確認を怠っていません。一方天候はというと……、快晴のカンカン照りではなく、空一面に雲が広がり、涼しい朝ではありませんか。快晴の空に雲を呼びこみ、気温を下げ、絶好のコンディションをもたらしたのは、まさに「雨男」の神通力だったのかもしれません。

 最高の曇り空の下、「入場します」の合図に、運動会が始まりました。

朝礼台に上った彼は、若干その声はうわずり、足も震えています。が、最高の舞台と、最高の空気に包まれて、子どもたちは張り切ります。迫力の応援合戦をはじめ、表情やリズム感豊かな低学年のダンス、元気いっぱい躍動するソーラン踊り、そして、土や汗にまみれた感動のスタンツ等々、子どもたちの素晴らしい演技が繰り広げられました。

  運動会後、だれもいなくなったひっそりとしたグラウンドをバックに、先生たちから胴上げのプレゼント。彼は、天に舞い上がりました。そして、感極まり、天からではなく、思わず彼の目から雨が……。やっぱり、彼は雨男なのでしょう。