日誌

とっておきの場所

 

 「あの遊具は、うちのおやじが作ったんだ」と校区の方が教えてくれました。あの遊具とは、本校の校庭にある、鉄の棒がずらりと並んだ上り棒です。当時、体力づくりの一環で、学校から要請があり、請け負って作られたと聞きました。「学校に自分の作品が、こうして未だに残っているなんて、すごいですね」と私が言うと、「そうそう、おやじにとっては、とっておきの場所」と答えてくださいました。

「とっておきの場所」と言えば、先日、かわいいお客さんが多数、校長室に来室されました。校長室にあふれんばかりのお客さんたちは、はじめて入室したその部屋を珍しそうにぐるりと見渡します。すると、何かひらめいたように、いきなりカーペットに着座して、鉛筆を走らせ始めました。1年生の学校探検。けっこう長時間、無心にスケッチを描き続けました。そして用事がすみ退室するときには、「ありがとうございました。失礼しました。」の声。行儀のよい来訪者のスケッチは、1年生昇降口に展示されました。果たしてお気に入りの場所になったでしょうか。

 一方、6年生の掲示板に行くと、想い出の場所の水彩画がありました。1年生と違い、彼らの絵には、5年間余りの学校生活という経験が上積みされ、思い入れがあります。「友と楽しく遊んだ」「部活動でがんばった」「1年生のお世話した」と いつも何気なく眺めているところも、想い出のフィルターを通すと、そこに頑張った自分がいることがわかります。6年生のみなさん、想い出を紡ぐのは、まだまだこれからです。

 さて、学校開放日、ご来校ありがとうございました。悪天候でしたが、親子下校いかがでしたか。我が子と傘を寄せ合いながら曲がったあの角も、今朝は女子中学生の待ち合わせ場所でした。通学路にもとっておきの場所があるのでしょう。家路へと急ぐ道すがら、想い出をたぐり寄せると、大切な場所が見つかるかもしれません。